下兵庫の蛇川「淵竜の池」由緒-スイレンと神宮寺【坂井市】

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福井県坂井市兵庫地区下兵庫の一角に、「淵竜の池」という場所があります。

6月から8月頃の間、池に植えられたスイレンが咲くこともあり、地域の人々のみならず、他地域の人からもその存在を知られております。最近では新聞やニュースにも取り上げられて、更に有名になっています。

淵竜の池

また、この池とその界隈には、様々な歴史と言い伝えが残されております。
「淵竜」という名前も、いかにも何かありそうな名前ですよね。

今回の記事では、その「淵竜の池」そしてこの場所にあったとされる神宮寺について触れてみたいと思います。

スイレンを見に行くときや、観光で訪れるときに歴史や言い伝えなどを知っていると、さらに「淵竜の池」を楽しめると思います。

 

併せて見所も紹介するので、参考にしていただければと思います。

「蛇川」と「淵竜の池」という呼び名

まず初めにふれておきたいのは名前です。

今は主に、「淵竜(えんりゅう)の池」という名で知られています。付近にある案内板もすべて「淵竜の池」になっています。

 

しかし、この「淵竜の池」にはもう一つ、「蛇川」という呼び名があります。

以前はこの「蛇川」という名で通っていました。

昭和57年発刊『淵竜は生きている ふるさと兵庫』では、「蛇川という池」という言い方で紹介されており、その中に「淵竜が棲んでいる」という表記です。

また、昭和11年発刊『福井県の伝説』では、「蛇川といふ沼がある」と表記されており、明らかにこの池の正式名称といいますか元の名前は「蛇川」なのです。

 

たしかに、現在の「淵竜の池」と言った方がインパクトやわかりやすさは勝っている気はします。

ただここで一つ悩ましいことがあります。

現地の淵竜の池の由緒書きには、「蛇川と呼ばれる兵庫川は乱流を重ね~」と書かれているのです。

つまり「蛇川」というのは「池」のことではなく、「兵庫川」のことだと言っているのです。ここで食い違いがあるのです。

 

たしかに「川」とついていますものね。「池」なのに「川」って言うのは違和感はありますが、やはり昔からの郷土資料と、兵庫地区発刊の郷土資料には「蛇川=淵竜の池」ということになっているので、自分はそちらの方の考え方で行かせていただきます。

ややこしいですね。

 

兵庫川が乱流したという点については、合っています。

後の「淵竜の池(蛇川)の歴史と伝説で詳しく紹介しますが、現在の兵庫川はだいぶ整備された形で、昔はものすごい蛇行して兵庫地区を流れていました。

そこから蛇や竜を連想したのかもしれません。

神宮寺と淵竜の池(蛇川)

神宮寺と淵竜の池(蛇川)の関係

この淵竜の池のあたりは昔、神宮寺というものがあったようです。

淵竜は生きている ふるさと兵庫』には、神宮寺のあった場所に関して、詳しい位置まではわかっていないということです。ただ、線路を挟んで向こう側にある春日神社境内に神宮寺があったとされ、その中に淵竜の池もあったとされているようです。

春日神社

なので、淵竜の池と神宮寺、春日神社は切り離せない存在です。

付近には「神宮寺跡」という石柱が建っています。

ちなみに昭和11年発刊『福井県の伝説』には、神宮寺の位置について、「社殿のわきにあった」と書かれています。
もしそれが本当なら、今の神宮寺の石柱の位置とはだいぶ違うことになりますね・・・。

 

念のため「神宮寺」について、、、

神宮寺とは平安時代あたりからの神仏習合の考えを象徴するもので、仏と日本の神は同じ存在とされたため、神社と仏閣の両方を祀った建造物です。

『新修坂井郡誌』には、この兵庫の神宮寺も平安時代に建てられたものだと書いてあります。それほど歴史のある土地ということですね。

越前では私達の村兵庫に神宮寺が建てられました。これは若狭の神宮寺とならんで福井県には二つしかありません。今に残る遺跡としては誠に貴重なものです。

引用:『淵竜は生きている ふるさと兵庫』

『淵竜は生きている ふるさと兵庫』には以上のように書かれています。

「これはすごい!」と思ったのですが、よく考えてみれば他にもあったような・・・

越前町織田の剱神社境内の神宮寺、敦賀市の気比神宮寺がありました。

これは・・・、いかに・・・。

いずれにせよ、そんな数少ない神宮寺がこの兵庫村にあったということです。

 

そんな偉大な兵庫の神宮寺は、戦国時代に兵火で焼失してしまいました

戦国時代、天正年間に一向一揆や織田信長の兵火にかかり焼き払われ、堂宇は烏有に帰してしまいました。

引用:『淵竜は生きている ふるさと兵庫』

この際に、神宮寺の釣り鐘を焼かれないために池に沈めたそうです。

これがなによりも神宮寺と淵竜の池の関りが深い要因でしょう。

 

現地の由緒書きには、一度再建されたものの明治時代の廃仏毀釈で再び消えてしまったといいます。

神宮寺が無くなった後、淵竜の池はしばらく放置されていたようです。

淵竜の池(蛇川)の歴史と伝説

ここからは、淵竜の池(蛇川)を主として見ていきます。

結構深い話になってしまったので、伝説から見たい方はこちら。見所を見たい方はこちら

池の誕生と兵庫川の地理

この淵竜の池は、由緒書きによると、兵庫川の幾多の氾濫でできた池の一つということになっています。

今の兵庫川は、ちゃんと整備された状態になっていますが、昔は、兵庫川はもっと複雑に蛇行していました。

出典:国土地理院ウェブサイト(https://www.gsi.go.jp/tizu-kutyu.html)
地理院地図(電子国土web)を加工して作成

赤で書いたものが、昔の上兵庫内の兵庫川の道です。

うまいこと今の兵庫の集落の形になっているわけです。集落の形からも当時の兵庫川の名残がありますね。確かにこの蛇行の仕方から見て、且つ反乱が多かった川というなら、蛇(竜)を連想するのもおかしい話ではないです。

 

この以前の兵庫川の進路も、幾多の氾濫で変わっていることでしょう。

神宮寺があったころには、すでに淵竜の池はあったようなので、それ以前の氾濫で生まれたものなのでしょうね。

 

淵竜の池は今の兵庫川と昔の兵庫川のちょうど合流点あたりにあるということになります。

この合流点の位置だけ今の春日神社の前という地点は変わっていないのです。そこからまた、下兵庫側も大きく今とは違う進路を取ります。

 

この春日神社の前あたりだけ、今も昔も同じ川の位置にあるというのはつまり、その部分だけ深かったか。有力なのは春日神社を過ぎてから再び北へ進路を取って、もの凄く深い蛇行になっていたかです。

こうなると、「淵竜」という名前の意味も、うっすら見えてきます。

「淵竜」という名前

川には「淵(ふち)」というものが存在します。それは、川の合流点や深い蛇行などで、水深が深くなったところを指します。

そういった「淵」には、様々な地域で「龍神」「大蛇」「河童」などが棲んでいる場所とされ、さらには「竜宮城」に続いている入口だという伝説も地域によっては残っています。

越前町の竜典長者の竜なども鏡が淵という淵に住んでいたりします。

 

兵庫の淵竜も、これに当たるのではないでしょうか。
兵庫川が土地改良の時、川を整備されても、途中今の春日神社の前あたりは同じ進路です。つまり、その辺りは昔から水深が深いか、そこから主となる大きな川、しっかりした川になっていくのだと思うのです。要は、「淵」があったのではないかと。

なので、そこに棲む、またはその近くの池に棲む竜または大蛇が「淵竜」という名前になったのではないかと思うのです。

まあ、これは本当に私の推測の域を出ませんが・・・。

 

ちなみにこの「淵竜」という名前。兵庫地区にとってとても大切なものということがうかがえます。

先ほどから何回か出ている『淵竜は生きている ふるさと兵庫』という郷土資料やもうひとつ『えんりゅう ふるさと兵庫4500年の歴史と文化』という郷土本。

また、この地区にある小学校。明治時代には、「淵龍小学校」という名前だった時もあります。今でもたまに学校の前を通ると「えんりゅう」という文字が出されているときもあります。

また、「えんりゅうのこ」という小学校の情報発信まであります。

それだけ地区の人は大切にして慕っているのですね。

淵竜の池(蛇川)の伝説

淵竜の池は神宮寺の庭にあったいけだともいわれています。

かつて、この池には多くの蓮の花が植えられていて、見事に咲き誇っていたそうです。

さらにそこには、この池の名前の由来となっている「竜」が棲んでいると信じられてきました。この龍がどういったものかという詳しい話はどこを見ても載っていませんでしたが、とにかくすべての資料に置いて行っていたのは、「竜がいると信じられてきた」ということです。

しかし天正年間に、一向一揆や織田信長によって兵火に遭い、神宮寺は焼かれました。伝説によるとその際に、神宮寺の釣り鐘をこの淵竜の池に沈めたといいます。

春日神社の蛇川

春日神社の境内付属地に、通称蛇川(じゃかわ)という沼がある。当社は以前は神仏混合で社殿のわきに神宮寺があり大きい釣鐘もあって大変賑わったのであったが、天正年中に一揆の兵火にかかった際、火難を避けるためにその釣鐘を蛇川に埋めて了った。蛇川は今は浅い水溜りで、中央に弁財天を祀り、周囲に蓮の花を植えてある。

引用:『福井県の伝説』

弁財天を祀っているので、龍神の信仰としても納得いく形にはなっています。

竜蛇関係の記事

淵竜の池の今昔

神宮寺時代の池は、今よりも大きかったそうです。それだけあって、竜が棲んでいると言われてきたのでしょう。

しかし、兵火や明治時代、福井地震など度重なる災いでしばらくの間、池は欝蒼とした森となっていたようです。

私の子供の頃は、うっそうとした樹林に覆われ昼なお暗く、イバラや芦等が生い茂り、いかにも物の怪の存在をうかがわせる恐ろしい所でとても近づける所ではありませんでしたが、今はすっかり様かわりし、池の中央に祀った弁財天の守護のもと小さな池がひっそりと静まりかえっているばかりです。

引用:『淵竜は生きている ふるさと兵庫』

昭和63年に地域によって改修され、今の状態になっているようです。

むかしは、こんなコンクリート固めのがっちりした貯水池みたいな池ではなく、岸などあって本当に沼地みたいな様子だった様です。

蓮の花も少し前までは、全くなかったですが、今は一面に植えられています。

『淵竜は生きている ふるさと兵庫』に当時の淵竜の池の写真があるので気になる方は見てみるといいと思います。

淵竜の池(蛇川)の見所

では、観光しましょう。

いままでの歴史や伝説を考えると何倍も面白いのではないでしょうか。

淵竜の池と弁財天の石塔

淵竜

池の中央にある塔は守護として、弁財天の石塔が祀られています。

弁財天と言えば、龍神や蛇の信仰と結びついています白へびで有名な永平寺の弁財天白龍王大権現も「弁財天」です。

個々の弁財天も淵竜や蛇川のなどの神として祀られているのでしょう。

 

伝説の域は越えませんが、現在「淵竜」はどこにいるのでしょう。

池が完全に人工の形になり昔の面影もありません。神宮寺の沈めた釣鐘も気になるところです。

今の池では、昔のように思いを巡らせることは困難になっていますが、池の中央に祀ってある弁財天に当時の面影と信仰を偲びます。

スイレンの花

神宮寺時代の昔から「淵竜の池(蛇川)」には、蓮の花が咲き誇っていたと記されています。

つい最近の時代まで放置されていた池ですが、昭和63年からの修復により、現在ではスイレンが咲き誇っています。

最近ニュースになったスイレンです。

スイレン

當時の池の面影はなくなったものの、古くより咲いていた蓮の光景がスイレンではありますが復活して、当時の面影を見ることができ、神宮寺があったという仏教との関りも垣間見ることができます。

 

今のスイレンを見れているのも、この淵竜の池を復興した方々の尽力によるものです。

スイレンの見頃は6月~8月ごろ。

蓮の花は、午前中に咲いて午後から閉じていくので、午前中のうちに見に来るのがおすすめです。

ちなみに私は、午後から訪れたのでほとんどの花が閉じていました・・・。

建造物の石材と地蔵

地蔵

池の端には寺関係の物が置かれていました。

見るも無残な地蔵さん・・・。倒れて首が後ろの壁に当たったのか。首がおれてしまっています。以前はちゃんとここに立っていました。なんてこった・・・。

他は土台などの石材ですね。これも神宮寺か昔の春日神社の遺物なのでしょうか。

常香炉?天水桶?

由緒書き看板の下には、寺の常香炉のような、神社の天水桶のようなものがあります。

常香炉?天水桶?

これについての説明が一切されていません。
なぜか石が入っています。

神宮寺ですからね。とにかく神社仏閣関係のものです。これも神宮寺があったころを偲ぶものでしょうか。

(この二つの桶。昔、男と女がどうのってみたことあるような気もしましたが、気のせいだったかな・・・?)

時代を乗り越えた淵竜の池

いかがでしたか。

この兵庫、なかなか奥が深いですよね。いかにも何かありそうな「淵竜」という名前。そこに咲き誇るスイレン。今の光景が、昔から様々なものを乗り越えた先が今の光景です。

スイレンを見に行くときも、このような歴史や言い伝えを思い出してみると、また深い魅力が見えてくるはずです。

参考文献:『淵竜は生きている ふるさと兵庫』『福井県の伝説』『新修坂井郡誌』『えんりゅう ふるさと兵庫4500年の歴史と文化』

基本情報

最寄り駅は、えちぜん鉄道三国港線下兵庫こうふく駅。徒歩4分

駐車場は、下兵庫こうふく駅にあります。

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近くには「大森古墳」という遺跡や「石動神の跡」などもあります。かなりマイナーではありますが、謎多き魅力のある場所です。

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