多くの町が存在し、その町々のなかで賑わいをみせる町とそうでない町が存在します。
その違いはいったい何なのか。
私は福井県在住です。
こう言っては何ですが、福井県は北陸三県(石川富山福井)の中で一番寂れている印象です。
石川県金沢市は駅周辺や香林坊周辺観光地、富山県富山市のデパート大和周辺がとても賑わっています。いったいなぜこんなにも差が出てしまっているのか。
私は寂れた県の側の立場でいろいろ考えてみました。北陸三県以外の県も見ていくとある点について気づきがありました。今回、北陸三県と福井に隣接する県、またつながりのある都市を見て行こうと思います。
賑わう町と寂れる町の構造パターン
私は賑わいを見せ、観光も多く知名度もそれなりにある地域と、寂れて観光化もあまり手が回っていない街のある構造パターンを見つけました。
それはズバリ、
「駅から繁華街・観光地までの距離」
です。
その町にある主要の鉄道駅から繁華街までの距離が少し離れている町は賑わっており、鉄道駅から繁華街までの距離が近すぎる町は寂れているように感じたのです。(東京は例外です。あそこは全部繁華街みたいなものですから。)
もちろん、駅から繁華街まで離れていれば離れているほど良いというわけではありません。
「少し離れている」つまりは程よく遠い距離にあるというのが重要なのです。
順を追って見てみます。まずは賑わいを見せる町の例からです。
賑わいを見せる町の駅と繁華街・観光地の距離
石川県金沢市
福井県のお隣、石川県の金沢市を見て行きます。
まず金沢の繁華街や観光地と言えばどこでしょうか。
- 近江町市場
- 香林坊
- 片町
- 金沢城
- 兼六園
以上の区間全体を占めています。
では、これらの区間は金沢駅からどのくらい離れているのでしょうか。直線距離で測ってみます。
一番近い近江町市場で920m程。香林坊・片町まで行くとほぼ2km。
それなりに歩くのです。ただ近江町市場~香林坊~片町は続いているので、2kmでも歩いて行こうと思ってしまいます。
結果的にその間の見所やお店にも触れることができますし、周回コースみたいな感じで歩き回ってしまうような構造になっているんですね。
しかも、観光の周回バスも頻繁にあり、歩きが得意でない人にもアクセスしやすくなっています。
富山県富山市
富山の繁華街と言ったら、どこでしょうか。
- デパート大和
- 総曲輪町
以上の周辺なのではないかと思います。
では、その距離にして如何なるものか。
駅から1.3km離れています。
これもまた結構離れています。
しかし、繁華街に着くまで富山城や桜で有名な松川があり、見所も充実しています。これも、もし繁華街が駅周辺にしかなかったら、そこまでやってくる人は半分くらいに減るかもしれません。
また、富山は路面電車が頻繁に運行されていて、繁華街近くまでも来ているので、歩かなくても金沢のバスのように公共交通機関も利用できるようになっています。
岐阜県岐阜市
岐阜の繁華街はあまりイメージ湧かないのですが、おそらくこれらかと。
- 柳ヶ瀬
- 名鉄岐阜駅周辺
うち一つは、駅周辺ですね。おそらく今はこの名鉄付近の方が賑わっているのでしょうか。
もう一つの「柳ヶ瀬」は昔からの繁華街です。駅からの距離は・・・
駅から約940m。
これまた1km近くありずいぶん離れています。
しかし、そこに行くまでには片側式アーケードがあり、お店もたくさんあります。また道中「金神社」という人気の神社もあるので、繁華街に行くまでにも見所はあります。
たぶん、その地へ行ったらついでにこの神社にもよっていくことになるんでしょうね。しかし、もしこの神社が繁華街までの道中になく、外にあったら、行く人はどれだけいるでしょう。
京都府京都市
京都はもう都会になってしまいますが、福井と隣接しているので載せておきます。
京都は全体的に賑わっていますが、やはり繁華街と言えばここでしょう。
- 四条烏丸~河原町御池
距離は駅から2kmくらい。
これはまあ、離れ過ぎですね。
ただ、その分バスや地下鉄の交通機関が充実しています。京都は観光地へのアクセスが悪いといわれがちですが、繁華街へのアクセスは結構充実しているのです。
それに、駅から歩いてでもそれまでに山ほど観光地があります。これは都会の強みでもありますけどね。
福井と特急でつながる「大阪」
例えば大阪は、大阪駅(梅田)がメインの駅だと思いますが、パッと思いつく繁華街と観光地でいうと、
- 繁華街は道頓堀以南。
- 観光地は大阪城。
この両方とも大体3km以上離れています。
ただ地下鉄はあるし、それまでにも駅~道頓堀に沿うようにして店が立ち並びます。
福井と特急でつながる「名古屋」
名古屋だと、主要駅は名古屋駅。勝手なイメージでパッと浮かぶ繁華街と観光地は、
- 繁華街は中部電力の塔やオアシス21辺り
- 観光地は名古屋城
こちらは大体2km~2.5kmくらいの距離があります。
こちらも大阪同様地下鉄がありアクセスに困る心配はないです。むしろこれらを見るに、駅から遠い所にあるからこそアクセスを設定したんじゃないかと思うほどです。
なんにせよそれで利用者もいるから続いているのでしょう。
駅と繁華街・観光地が近い場所
福井県福井市
では、福井県の県庁所在地である福井市の福井駅周辺を見て行きましょう。
福井市の繁華街・観光地と言えばどこでしょうか…。まずそこから悩みますが、おそらく
- 駅西口
- 片町
- 福井城
- 柴田神社
以上でしょうか。ちょっと観光地に関しては自信がないですが。
一番遠い片町で800mも行きません。
しかも片町はたぶん昼間じゃなくて夜行く人が多いイメージ。これでは、バスも見所もない・・・。
そのほかはすべて400m圏内です。近い・・・!
これでは、他にもまだまだある福井の見所に足を運ぶことさえないですし、地域の店が出店できる範囲が限られて店も少なくなる。公共交通機関を使ってくれることもないでしょう。
結果、「何もない所」ができてしまいます。
石川県小松市
小松市の繁華街ってどこだろう・・・。
でも駅周辺にアーケードがありますね。300mくらいのところです。
しかし、この小松市には大きな力がありますね・・・!
イオンモール新小松
しかも程よい距離にある!
小松は他にも見所ありますが、ほとんどこれに持っていかれてると思う福井県民です。
富山県高岡市
- 繁華街というか歓楽街が駅から300m範囲内に広がっています。
- 北には高岡城が700m超。
- 南には国宝瑞龍寺が500m。
高岡駅の周り全方向に見所が散らばっている感じですね。距離的には近いけど「周回観光」には最適な街でしょう。
しかもですね。高岡にはもう一つ主要駅ができまして、新幹線の新高岡駅です。その近く、つまり高岡駅から「程よい遠さ」の場所に、
イオンモール高岡(増床されて凄くでかくなった)
というものがあるのです。またしてもイオンモール・・・!
もう敵わないと思う福井県民です。
異質の滋賀県
滋賀県は何とも異質な雰囲気があるなと思っています。(悪い意味ではなくて)
というのも、滋賀には琵琶湖があり、その周りをJRが滋賀県内を網羅するように輪っか状に路線が巡っているのです。
要は、滋賀県内がどこでも主要駅になりうるということです。
そしてそれは、現実のものとなっています。
- 長浜
- 彦根
- 草津
- 大津
- 大津京
これらは、それぞれ賑わっているのとそうでないものの中間にいるような感じがします。それぞれが違う町並みで、それぞれが独立して控えめに賑わっています。
不思議な県です。
ただ町の構造は、繁華街や観光地などは駅から近いです。
滋賀県の場合、「1つの県に1つの大変にぎわう町がある」のではなく、「1つの県に複数の賑わいがあって、それぞれに分散され且つ独立して賑わっている」という感じです。
なので、一つひとつの町を見るとすごい賑わいかと言うとそうでもないですが、滋賀県総合的に見ると、北陸三県より賑わってそうです。
駅から繁華街が程よく遠い距離にあると賑わう理由
以上の町々を見て来ましたが、いったいなぜ駅から繁華街程よく遠い町の方が賑わっているのか。
私個人の意見ですが以下の理由があると思うのです。
- 程よい距離なので、観光の人は駅から下りて繁華街まで歩いても行ける距離だから。
つまり、歩いていくことで、繁華街に行くまでの見所や地域の店に広範囲で立ち寄ってもらいやすい。結果的に広範囲が賑わう。 - もし、歩かずにバスなど使った場合でも、町の公共交通機関を使ってくれるので町が潤う。
- 程よく遠い距離なら歩いてもいいと思う人や、むしろ辺りを歩き回りたいという人も出てくる。
- 程よく遠い距離を「観光周回コース」として広範囲に観光化を図れる。
要するに、広範囲の区域が賑わうということです。広いとそれだけ観光の見所や地域のお店がある数が増えます。なので「いろいろある町」という印象ができるのだと思います。
駅から繁華街が近すぎると寂れる理由
上記の賑わいを見せる理由がわかれば、寂れる町をその反対の考え方をすればおのずと理由が見えてきます。
- 近いと観光の人は駅から下りてすぐ繁華街に着いてしまう。
つまり、見所や地域の店が道中にない。狭い範囲に何もない状態。見所は街の外にあっても見つけられなければ無いのと同じ。地域の店も賑わいがない。 - 近すぎると公共交通機関を使う必要がない。街が潤わない。
- 目的の繁華街が近すぎると町を出て他の場所を歩こうとは思わない。
- 駅から狭い範囲にしか繁華街が無ければ周回すらしない。
人が来たとしても狭い範囲しか認知できず、地域の見所や店は陰に潜んだまま。狭い範囲しか人が来ないというのは結果的に「何もない町」とされてしまうのです。
街の開発可能な規模や面積も限られているのが現実
以上、散々書いてしまいましたが、結局町の大きさっていうものは運命のように決まっている物でもあります。
例えば、兵庫県神戸は山と海の間にある狭く限られた土地しかありません。しかしあそこは横に広いです。神戸三宮から神戸駅までずっと繁華街みたいなものです。距離にして2km以上。
その距離があれば、両駅から程よい遠さを両方から開発を攻めることができます。しかも海という最大のポイントがあるので、神戸はあそこまで発展したんでしょう。
石川県小松や富山県高岡は、観光化というよりも駅周辺まで住居が大部分を占める「居住地がメインの町」ですから、たとえ見所はたくさんあるにしても、これらの町を今から「観光メインの町」に開発するのは難しい所。(おそらく石川富山は、もう観光の町があるのでそんなこと考えてないと思いますが。)
「観光メインの町」か「住居メインの町」か
そうなると福井市や鯖江市、武生のみならず、一部の鉄道が通っていない街を抜かしても駅周辺を見ると、居住地が多く、結果すべての市町村が「居住メインの町」です。
街の発展と共に観光や遊びの町になるか、居住に適した街になるかの分かれ目の際に、福井は「居住優先の町」になったのでしょう。
だから福井に観光に来ても「何もない」「見るものがない」といわれるのです。
もし主要駅の程よく遠い場所に観光整備できるところがあれば別ですが、すでに「居住メインの町」として発展した福井は駅周辺も住居が立ち並びます。今から「観光メインの町」として生まれ変わるのは、なかなか難儀な事なのかもしれません。
福井県はどう立ち回るべきか
福井には見所はある。ただアクセスが・・・
福井県には見所はたくさんあります。
ただすべてにおいてアクセスが絶望的に悪いです。
福井は車社会なので気にならないですが、県外から電車で来た場合、程よく離れているどころか離れ過ぎていく気にならない気がします。
例えば以下
- 東尋坊・・・芦原温泉駅からバスに乗り換えて、計40分かかる。
- 恐竜博物館・・・福井駅からえちぜん鉄道に乗って勝山駅でバスに乗り換えて、計1時間15分かかる。
- 丸岡城・・・丸岡駅からバスに乗り換えて、計18分。(バスの本数が2時間おきという少なさ)福井駅からだとバスで計1時間かかる。
こういうのもなんですが、車を持っていない方にはかなりきついです。
というか県外から電車でくる人にとっては、そこまでしていかないのではないかと思うのです。
とはいっても、今から鉄道路線を増やすなど時代にあっていないし、まず不可能です。なかなか難儀な課題です。
福井が観光に力を入れるべき地域はどこか
難儀と言えど、やはり県内に観光のメイン会場は一つくらいほしい所ではあります。
では、いったいどこに観光の力を注ぐかです。
私が思うに、その最適な場所は
敦賀市
だと思うのです。
福井観光の希望「敦賀市」
敦賀市。
北陸新幹線が敦賀まで開業したら、延伸まで22年間北陸新幹線と大阪名古屋からの特急、両方の終着駅となります。
つまり、北陸・関西・中部・関東の終着駅として出入口になるわけです。
しかも観光フェリーまであります。
そんな敦賀市の駅と繁華街・観光地の距離を見てみましょう。
- 繁華街は駅から気比神宮までの片側アーケードと本町
- 気比神宮
- 金ヶ崎(赤レンガ・金ヶ崎宮含め)
- 駅から気比神宮まで1km
- 駅から金ケ崎まで2km
そう、賑わいの町の要件を満たしているのです。居住区域ではなく、程よく遠い距離の商業区域もすでに確立されています。しかも気比の松原を入れた周回バスまで頻繁に出ています。
敦賀は今、金ヶ崎のプロジェクションマッピングなど観光に力を入れています。
このプロジェクションマッピングは通年行われていて、北陸新幹線開業に向けて誘客促進の狙いで、金ヶ崎緑地の夜間景観をつくるという目的でやっている事業です。
本当に頑張っているのです。
しかも冬になれば「ミライエ」という福井県内でもかなり大きい規模のイルミネーションを毎年行っています。
また、最近では敦賀今庄周辺の鉄道遺産が日本遺産に登録されて、それらも生かしていこうとパンフレットまであります。敦賀にはそう言った鉄道の遺産がたくさんあるので、今後敦賀港線あたりの活用なども期待されています。
まさに福井の星なのです。
ただ敦賀には重要なものがないのです。それはなにか。
繁華街らしい繁華街が敦賀にはないのです。
商業区域があるにもかかわらず、あまり賑わっているとは言えない状況です。
強いて言えば、「駅前通り~本町商店街~神楽商店街(気比神宮前)」と「本町一丁目界隈」でしょうか。それでも繁華街というほどでは・・・。
敦賀は観光地の促進に力を入れているのは目に見えてわかります。がんばっています。しかし、駅から気比神宮周辺の片側アーケード通りのお店の出店や商店街の活性化については、あまり実感がないのです。(私が経営者じゃないのでわからないだけかもしれませんが・・・)
敦賀市のみならず福井県が敦賀の観光促進として、駅から気比神宮周辺の「お店の出店や支援」もしていくことで、敦賀は「福井県観光の希望の星」になるのではないかと思うのです。
福井県観光の今後
もちろん敦賀以外の市町村も魅力は山ほどあります。
勝山の恐竜博物館はまさに福井の一大観光地。子供連れの家族は車を持っている人が多いだろうし、そう考えると恐竜博物館は今のまま維持していっても十分すぎるほど素晴らしいです。
しかし、福井県には金沢の香林坊辺りや富山の大和辺りような賑わった「街中」が存在しません。
そういった地域を福井にも一つ作ることで、いわゆる「都道府県の観光の主力(キラーコンテンツ?)」が生まれます。そして敦賀がその場所に一番ふさわしいのではないかと思うのです。
そして敦賀が「福井県」の名を全国に広める、いや「敦賀」の名を広めるのでもいい。それで「敦賀のある福井県とは何ぞ?」ということになれば、他の市町村もついてくることになると思うのです。
JRの貨物線もどうなるのでしょう。あそこも整備できればもっと魅力的な街になると思うのですが・・・。
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