石の枕の伝説 ~昔話の舞台、稲津橋周辺の様子【福井市】

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稲津橋

ここから東郷へ行く人は
石の枕をしなさんな

福井県福井市酒生地区稲津。

足羽川に架かる稲津橋周辺に伝わる少し怖い昔話
「石の枕」という伝説を聞いたことあるでしょうか。

今回は、その「石の枕」の伝説が伝わる稲津橋周辺とその伝説を見ていきます

どこにあるのか、どんな場所か

稲津橋標

福井市稲津町内を流れる足羽川。
そこに、県道25号線の橋が架かっています。

歩道専用橋もある、この二つの橋が稲津橋です。

すぐ近くには高速道路があります。

伝説「石の枕」

 昔、ふくいから大野へ行く際は、ここ稲津橋を通り、東郷を経由していた。その橋の東郷側のたもとには宿があった。
 1人のあきんどが福井から大野へ行く途中、稲津橋を渡り、宿を見つけた。日も暮れる頃だったので、彼は宿を見つけて幸いに思い、入ることにした。
 宿屋の前では12、3歳くらいの少女が赤子をあやしながら歌を歌っている。
 
ここから東郷に行く人は
石の枕をしなさんな
 
 悲しげに歌う少女。あきんどは、「ここの宿の者か」と尋ねたが、彼女はうつむきながら歌い続ける。あきんどは特に気に留めず宿を頼んだ。宿の主は、最初むっつりしていたが、旅人だと分かると愛想よく案内した。
 夜、あきんどが床に就こうとしたとき、枕が冷たく硬かった。それは石の枕であった。彼は少女の歌を思い出した。
 
ここから東郷に行く人は
石の枕をしなさんな
 
何かあるのかもしれない。そう思った彼は、石の枕を使わず、部屋の隅へ移動した。しばらくして天井から物音が聞こえ、その直後大きな石が上から、石の枕に向かって「ドンッ」と落ちてきた。あのまま石の枕を使っていたら、頭がつぶされていた。彼は恐怖で逃げ出した。
 数日後、役人がやってきてその宿を調べ、宿の主人の悪事が明らかとなった。旅人を石の枕で寝かせ、殺害。その手持ちの品を盗んでいたという。歌を歌っていた少女は、それを知っていたため旅人が来るとあの歌を歌って、主人に悟られないように警告していた。
 宿屋の主人は稲津橋でさらし首となった。
 明治二年に、宿屋の跡地を掘ることがあったが、その時に6、70人の骸骨が出たという。
 
参考:『福井県の民話』
 
※伝説によっては、少女の歌を不思議に思った目明し(岡っ引き、犯罪の探査,犯罪者の逮捕の補助をした人)が宿に泊まり、事を暴いたとも。『福井県の伝説』

おっかない話です。

しかも明治2年に骸骨が出たとかいう後日談まであるのが衝撃ですね。しかも、稲津橋でさらし首って・・・。

そんな詳細までありますが、他の郷土史には特に記述はないです。闇に葬られるべき話だったのか、それとも単なる「民話」としての作り話か。

現地の様子、石仏など

とにかく現地へ行ってみることにします。

稲津橋

稲津橋歩道

現在の稲津橋は、1958年に施工され、歩道専用橋は1982年に出来たものです。

しかし、稲津橋であることには変わりなく、この場所がその舞台です。

橋の下の謎の石仏

稲津橋下

そんな稲津橋の下に、謎の石仏があるのです。

あの伝説を見た後なので、どうにも関連性を感じてしまいます。

稲津橋の石仏1
稲津橋の石仏2

いったい何の石仏なのか。

わかりませんでした。

というのも、この石仏の横には文字が彫られていたのですが、明らかにその部分だけが意図的に削り取られた跡があったのです。

少しだけ見えたのが、

昭和四十二年三(五?)月吉日

と書かれていたような跡がうっすら残っています。しかし、なんだか、触れてはいけない気もするので、これ以上の詮索はやめておきます。

ちなみに、この石仏があるのは東郷側ではなく、稲津側なので、おそらく「石の枕」とは無関係だと思っています。

橋の施工記念かと思いましたが、施工日とも違う洪水の被害供養か、橋の工事の供養か。はたまた、この稲津には「親子淵」や「流れた墓石」などの伝説があることからそれ関係か。それとも・・・

はい・・・、ここまでにしておきます。

東郷側岸の様子と地蔵

さて、東郷側に来てみました。

こちらにも石仏があります。

稲津橋地蔵

こちらは普通に道路沿いにあります。

旅地蔵の類かなと思っています。石仏自体は年季が入っているように思えます。石仏とそれを囲っている祠は見た感じ笏谷石製かな。

冬以外は草の中に埋もれていて気付かれにくいでしょう。

伝説の時代を見てきたのか、その後に置かれたものなのか。
ただ、この石仏はひっそりと現代の人々が行き交うのを見守っています。

東郷側の橋のたもと

稲津橋東郷側

東郷側のたもとです。

結構車通りがあります。

商店がありますが、今はやっているのでしょうか?

稲津橋東郷東側

六条方面へ降りていく北の道。

空地は多いですが、いまではその石の枕の宿については全く分かりません。

稲津橋東郷東側

橋のたもとから東郷方面を見た写真です。

左は足羽川の土手の道。右が東郷・文殊地区方面への道です。

東郷への道は、今は右へカーブしていますが、昔はこのまままっすぐ東郷へ繋がっていました。
たしかに、東郷へと行く道であったことには間違いないようです。

水路の遺跡

稲津橋たもとの水路

そんな東郷側の橋のたもと付近には、水路の遺跡もあります。

こうやって昔の遺構も保存されているのです。

これほどまで整備されていたなら、昔もこの辺りに人が住んでいたのかもしれません。
逆に考えれば、それほどちゃんと整備されていたところでそんな悪事を働いていたのか。『福井の伝説』で、役人が潜入したのもそんな理由だったのか。

いろいろ考えさせられます。

歴史的に考察する「稲津橋」

稲津橋はいつから架かっていたのか

さて、この「稲津橋」について、少し歴史的観点から見ていこうと思います。

この稲津橋、今の稲津橋は先ほど記した通り、車道が1958年歩道専用橋は1982年に施工されています。

この前の稲津橋もあるのです。

1949年に木橋として架けられていたそうです。
『中日本建設コンサルタント株式会社 島田技術顧問のサイト F18 福井県』参考

さらに遡ると、国土地理院の測量地図『大日本帝國陸地測量部 1930年測量』の地図には、稲津橋が架かっていました
しかし、同じく国土地理院測量地図『大日本帝國陸地測量部 1909年(明42)測量』の地図には、この稲津橋が記されていないのです。

先ほどの『中日本建設コンサルタント株式会社 島田技術顧問のサイト F18 福井県』にも、「九十九橋」や「幸橋」、「舟橋」など江戸時代の橋の記載はありますが、「稲津橋」は昭和以降の記載しか載っていませんでした

これは、つまりそれ以前には稲津橋はなかったことになるのではないか。
私はそう思うのです。

美濃街道(大野街道)のルートは?

さらに調べます。

福井から大野へ向かう美濃街道についてです。

もし、稲津橋が江戸時代になかったとしたら、この「稲津橋を通って東郷へ向かう」というルートも存在しないのではないか。

福井ー大野間のルートは3つあるそうです。
『歴史の道調査報告書第5集 美濃街道・勝山街道(永平寺道・白山禅定道) 福井県教育委員会』を見ていきます。

  • 福井浅水宿から東郷へのルート(太田街道)。
    これが東郷を経由する道で一番古い。この道は、すでに福井中心部で足羽川を渡っている。後に前波の渡し。
  • 春日口(木田一丁目)から東郷ルート(東郷道)。
    これも福井中心部で足羽川を渡っている。後に前波の渡し。
  • 勝見口(和田口・河原口)ルート(大野街道)。
    そもそも東郷を経由せず、足羽川の東郷とは反対の道。天保の絵図では美濃街道はこのルートらしい。

一乗谷前、前波町あたりに渡し舟があったのだそうです。東郷ルートはこの前波の渡しで足羽川を渡っていたと言います。(前波は一乗谷と三国を繋ぐ川の港でもあったようです。)

ということは、江戸の美濃街道(大野街道)では、稲津橋を渡るどころか、存在すらなく、稲津付近で川を渡ったわけでもないのです。

 

となると、この「石の枕」の伝説。
明治2年以前の話という前提で考えると、どうでしょうか。江戸末期辺り以降、明治二年以前の話になるのでしょうか。だとしても、稲津橋の存在すら怪しい。

結論は出せません。本当にあったことかもしれません。なかったかもしれません。

一つの「昔話」として

様々な考察をしてきましたが、今までも何度も言っている通り、「伝説」はあくまで「伝説」。

嘘か本当かではなく、一つの「昔話」「民話」として言い伝え、たまにはいろいろ考察していって、楽しむ程度がちょうど良いのだと、私は今回改めて感じました。

その土地に伝わる伝説に想い馳せ。

これからもロマンを求めて。

参考資料
『福井県の伝説』
『福井県の民話』
『越前若狭の伝説』
『歴史の道調査報告書第5集 美濃街道・勝山街道(永平寺道・白山禅定道) 福井県教育委員会』
中日本建設コンサルタント株式会社 島田技術顧問のサイト F18 福井県
国土地理院サイト

動画もあります。

https://youtu.be/oax6sILuY6c

基本情報(アクセス)

最寄り駅は、JR越美北線六条駅から徒歩15分足羽駅からは徒歩11分

自動車では、福井ICから3分

駐車場はありません。

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