てんぐ松。
その名の通り、天狗がいるとされた松です。
今回は、そんな伝説が残るというてんぐ松を求めて、福井県勝山市荒土地区北新在家を訪問です。
てんぐ松の伝説
まず、始めにどういった内容の伝説なのかを見てみましょう。
むかしこの村のおばあさんが、てんぐにだまされて姿を消しました。村人全部あちこち一晩中さがしましたが見つからず、ある朝隣り村の火葬場にいる所を発見されました。おばあさんは、「きれいな御殿に住んでいた」と話していました。 参考:『越前若狭の伝説』 |
伝説や妖怪好きとしてはたまらん話です。
なんというか、てんぐもこの集落の住人の一人みたいな扱いですね。
所在は北新在家のお宮と場所が絞られているので、その辺りを探せばよいのですが・・・、ただ、「村のお宮」とだけで、明確な名前がわかりません。北新在家にはたしかに一つだけ神社があります。
少名比古那神社です。
この「お宮」がその神社なのか定かではないですが、とにかく行ってみることにしました。
北新在家のお宮
北新在家集落の北のはずれに、目立つ社叢があります。
ここが、この北新在家集落にある唯一のお宮「少比古名神社」です。
ただ、なにか「天狗」にまつわる石柱や看板などないか探してみましたが、まったくもって痕跡がない、どうも解決できそうにないので、集落に行ってみました。
外にいらっしゃった方々にお話を聞くことが出来ました。
集落の方の話とてんぐ松のお宮
お話を聞くと、やはりあの「少名比古那神社」にてんぐ松があったそうです。
伝説でも
「今ではこの松も枯れて…」
とあります。
だいぶ前に切られたらしく、今は何も残っていないといいます。
話を聞いた方の、小さかった頃は
「お宮さんに近づくと天狗にさらわれる」
とよく言われたそうです。
その「てんぐ松」は鳥居の横にあったらしいです。
結構変わった形の松の木だったらしいですが、だいぶ前に伐られてしまったといいます。
今では本当に何も残っていません。
大きな切株みたいなのが地面に埋もれているような感じもしましたが、そうあってほしいという思い込みだったかもしれません。
境内には、現在は使えない遊具がありました。
天狗にさらわれるというもとで遊具。やはり、てんぐさんを完全に拒絶しているような様子は見受けられません。
「少名比古那神社」。
社殿は斜めを向いています。ちょうど、北新在家集落の中心を向いているようです。
境内には銀杏や杉の大木があり、そうとう昔からの社と見えます。
しかし、松の木は一本もありません。てんぐ松が唯一の松の木だったのでしょう。
集落でお話を聞いた方たちは、
「松が伐られたから天狗さんもどこかへいったしまった」
ともおっしゃっていました。どこか淋しい言葉にも聞こえました。
伝説にもある、
「雨の降る夜はお宮の方からドーンドーンという低い音はきこえる。いまの高校生もこの音を聞いたことがあるという。村人は、てんぐさんがさみしがって太鼓をたたいているのだといっている。」
という文もありますが、集落の方たちの「てんぐ」への思いは、悪いものではないように思えます。
村の人々にとって天狗さんとは
この集落の人々と、てんぐさんの関係はそれほど険悪なものではないように思えました。
鳥居のすぐそばには古めかしい遊具もあり、てんぐさんも同じ集落の仲間の一人のような感じがします。
集落の方たちはこの「てんぐ」を恐れながらも親しみを持っていたのかもしれません。
参考文献:『越前若狭の伝説』
基本情報
アクセスは、県道112号線から北新在家に向かいます。
本当に村の神様なので、駐車場はありません。
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