秋、紅葉の季節。福井県越前市粟田部にある花筐公園は紅葉の名所として福井県内外から人気の場所で、もみじ祭りも行われます。
今回は、そんな花筐公園の見所や名所、紅葉の様子、そして継体天皇に関係する場所や能「花筐」に関係する碑などを紹介します。
花筐公園の「花筐」とは
この公園は、世阿弥の能『花筐』が由来となっています。そしてその登場人物に継体天皇がいます。(能の内容説明は、当記事【花筐ゆかりの地】の項目にて記します。)
この能『花筐』の読み方は「はながたみ」ですが、花筐公園は「かきょうこうえん」という読み方をします。
なぜ同じ読み方にしなかったのか謎ではありますが、そうなっているようです。
では、紅葉の見所を見ていきましょう。
紅葉の見所
花筐公園遊歩道
やはりメインは花筐公園です。
どこまでが花筐公園なのかというのは非常に曖昧ですが、隣接する岡太神社や琴弾山などずっと遊歩道が繋がっています。
山の奥から冒頭の花筐公園石柱あたりの下の広場まで、ほとんどが紅葉で埋め尽くされているので、ここの花筐公園の広場に来れば間違いないかと思います。
岡太神社境内
花筐公園と隣接する形で、岡太神社が鎮座します。
よく花筐公園を紹介するときに出てくる鳥居と紅葉の写真がこの岡太神社本殿前と思われます。
この鳥居前以外も岡太神社拝殿あたりまで紅葉が美しいので、ここだけにとどまらず、散策してみるともっといい場所が見つかるかもしれません。
また、岡太神社自体も継体天皇ゆかりの地となっています。別記事に深い歴史や由緒、今に残る建造物などを詳細に記しました。
琴弾山と忠魂碑への道
琴弾山への道は数多くありますが、個人的には忠魂碑を通る徒歩で行く道がおすすめです。
少し登山ぽい道ではあります。高低差もあり、崖も急ですが、ここにある紅葉が個人的には公園内で1,2位争う美しさでした。
見渡す限り紅葉。空を仰いでも紅葉の状態です。
ただ、舗装されているわけではなく、少し岩肌が出て足場が悪い場所もありますので、注意は必要です。
金比羅神社への道
花筐公園から山道を登っていくと、金比羅神社があります。
神社はかなり山の上にあるので疲れるのですが、それまでの道の紅葉が美しいです。
そのほか参道には赤い鳥居や、灯籠があります。それらと紅葉を併せて見るとまた美しく見えます。
花筐ゆかりの地
花筐ゆかり乃地碑
花筐公園広場から北へ登っていく道の先に「花筐ゆかり乃地」という碑が建っています。
先ほども記しましたが、花筐とは世阿弥の能『花筐』のことです。この花筐公園もこの『花筐(はながたみ)』から名付けられています。
ではここで、その花筐についてざっくりですが、知っておこうと思います。
能『花筐』の物語
男大迹皇子(おおどのおうじ、後の継体天皇)は越前味真野に住んでいましたが、急きょ皇位を継ぐことになり、都へ行かなくてはならなくなりました。味真野で皇子の寵愛を受けていた照日の前に使者を出し、愛用の花筐と手紙を送りました。照日の前は突然の別れでひどく悲しみました。 時は経ち、皇子が継体天皇として即位したある秋、官人を連れて紅葉狩りに出かけます。対して照日の前は悲しさのあまり狂女となってしまい、天皇がくれた花筐を持ち、侍女を連れて天皇に会いに都へ向かいます。道中その姿を道行く人に嘲笑されます。 天皇の列の前に狂女となってしまった照日の前が現れます。官人は照日の前を無礼者とし持っていた花筐を打ち落とします。照日の前は天皇が愛用していた、そして自分との関係を象徴する「花筐」を打ち落とされたので、キレて泣き出します。すると天皇からの指示で舞を舞えと伝えられます。照日の前はここぞとばかりに思いを舞いに込めます。次に天皇は花筐が見たいといいます。その花筐を天皇が見ると、自分が昔使っていたものに間違いないとして、照日の前を受け入れます。 最後は天皇の列に加わり、一緒に都へ帰りました。 |
という物語です。
参考はいろんなサイトや郷土資料を見て、自分なりにまとめて書いたので、少しニュアンスが違う所もあるかもしれませんが、「花筐」で調べればもっと詳しく書いてあるサイトは多くありますので、そちらで見ていただいてもいいかもしれません。
花筐公園のある粟田部より南にある「味真野の郷」は、この『花筐』で継体天皇と照日の前が住んでいた場所として、いわば「聖地」となっています。
別記事で取り上げる味真野神社境内には「謡曲花筐発祥の地」という石碑もあります。そのわきには『花筐』の説明も書かれているので、そちらも合わせて見てみても良いかもしれません。
また、この花筐は有名な絵師の作品の題材にもなっています。
日本美人画の巨匠、上村松園の『花筐』が有名で、狂女となった照日の前を描いている作品です。なかなか見ごたえのある作品でした。
最近「あやしい絵」というジャンルが人気で取り上げられています。私もそれ関連の記事があるので、その中で上村松園の花筐も紹介しています。
>あやしい絵展に行けなかった人へ贈る「あやしい美人画」という画集
『花筐』は、紅葉狩りの季節がメインとなっているみたいですし、上村松園の「花筐」も紅葉で描かれているので、この「花筐公園の紅葉」は、まさに能『花筐』を彷彿とさせるような場所となっているのです。
花筐公園の能楽堂
花筐公園の広場に能楽堂があります。
ここは、『花筐薪能』と称して2,3年おきくらいに実際に能を舞うことがあります。
『花筐』が能の演目であり、紅葉の季節が舞台の一つであるので、今の時期少し上の方から紅葉と共にそのステージを眺めるのも、また風情があっていいものです。
他、見所
緋寒桜
花筐公園広場北の登り途中に、「ふるさとの家」なる建物があります。
その門をくぐると、緋寒桜と書かれた看板と、当の桜があります。
なんとこの時期、数輪だけ咲いていたのです。背景は真っ赤な紅葉です。
この桜と紅葉の組み合わせはなかなか面白いものです。
毎年こうなのかはわかりませんが、この風景を見ることのできるチャンスはあると思います。
佐山姫公園から皇子が池の継体天皇旧跡巡り
花筐公園と隣接する形で、佐山姫公園、皇子が池、佐山天神があり、それぞれ継体天皇や周りの妃や子の旧跡となっています。
こちらは一通りまとめて別記事にしてありますので、紅葉を見に行くときは合わせてこれらの場所に行ってみるといいかもしれません。
基本情報(バス、駐車場、地図)
ここでは、花筐公園広場への基本情報を記載します。
最寄り駅は、JR武生駅からバスに乗り換え、花筐公園口または粟田部で下車、徒歩3~4分。
武生ICから車で9分。
駐車場は、隣接する佐山姫公園へ。
ちょっと一息。
花筐公園のある粟田部のそば屋『より処』さんを紹介します。
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