新保の無縁供養塔 ~海難事故を今に伝える【坂井市三国】

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北前船で栄えた三国港。
海運で栄えた町には人や船が集まってきますが、その分海難事故も多くありました。

今回訪れたのは、そんなかつての海運の町であり、現在も漁業の港として現役の福井県坂井市の三国港。その対岸の新保区端にある、海難事故をひっそりと今に伝える供養塔です。

どこにあるのか、どんな場所か

新保船場と供養塔

福井県坂井市三国町新保の北端、いざき親水公園や九頭竜川ボートパークなどがある場所にその供養塔があります。
本当に新保の海岸で、まさに九頭竜川の河口

奥には、火力発電所がありますね。

主要施設がたくさんあるので、道路も整備されていて、駐車場も大きいです。

新保には「灌頂寺」という巨大寺院があったともいわれ、歴史の古い土地です。

そんな新保の地にある供養塔です。

新保泥原の無縁供養塔

新保無縁供養塔

この供養塔、結構大きくて幅も太いです。高さは3メートルはあるのでしょうか。それくらいあります。

真ん中のには梵字が彫られています。

供養塔の傍らには説明板があり、しっかりとこの由来が書かれています。
その横には、供養塔を示す石柱があります。

説明板によると、正徳年間に立てられたそうです。
江戸中期元禄年間(1688~1703)に日本海側で多くの海難事故が発生、三国港、新保浦の北前船もその例外ではなく、特に新保の北前船乗組員は想像を絶する犠牲が出たそう。新保の海岸には多くの死者が漂着。その無縁者屍を葬り霊を供養したのが、この供養塔。海を展望できる台地に建立したといいます。

説明板をざっくり説いて書きました。

江戸中期ということは、北前船が盛んに動き始めたころです。船出をするものが多く、その分比例して海難事故件数も増えたのでしょう。

『坂井郡誌』の方にも書かれていました。
こちらには、供養塔自体について詳しく書かれていました。

正徳三年(1713)癸巳四月十九日これを建て、三国魚屋次郎八先祖を初め破船して死したる者数多たる為に瀧谷寺徳戒法印読経せりという。土基五尺四方、高一丈五尺あり、然るに貞享の絵図記に、浦より巽の方に小山あり浜辺に無縁塔ありと見えたれば正徳三年には築直したるものにて最初に築きしは何の頃という事を知らず

引用:『坂井郡誌』

さて、建てた時期や元あった場所がいろいろわかりましたね。

建てられたのは、正徳3年4月19日と書いてあるものの、「築直したるもの」とあるのは、建て直したという事でしょうか。最初に建てられたのはわからないと書いてあるので、正徳3年よりもっと前?
だから説明板では、正徳年間という表記になっていたのですね。
もしかしたら、もっと前かもしれないのでしょうか。
少なくとも北前船が盛んになって以降から正徳三年の間という事のようです。

元あったのは「小山」という場所。
今では、いろんな建造物が建てられてしまって、小山がどれかわかりません。
ただ今供養塔がある場所は、元々浜辺でした。ただ、かつてちょうどこの辺りに工場みたいなものが立っていたんです。
元々ここにあったのか、移動して来たのかはわかりません。

供養塔の大きさについてもかかれていましたね。
高さ一丈五尺あると書かれているので、4.5メートルくらいあるということです。優に3メートル超えてました。大きいです。

これほど立派なものが建てられたという事は、それほど甚大な被害だったのでしょうね。

供養のため、事故の歴史を忘れないため、そしてこれからのため

海難事故は、昔にとどまる話ではありません。

海に出て、犠牲になった人々。そして大勢の亡骸が、この海岸に流れ着いた。

新保の供養塔は、江戸時代に海難事故の犠牲者を供養するために建てられ、そしておそらく建てられた後も、その後の海難事故の犠牲者を供養し続けてきたのでしょう。
その歴史を忘れないためにも。

そして今も、これからも、この供養塔はこの海での犠牲者を供養し続けます。
この海を見守りながら・・・。

供養塔と海

参考文献:『坂井郡誌』、他現地説明板

基本情報(アクセス、最寄り駅バス停、駐車場)

最寄り駅は、えちぜん鉄道三国駅からバスで新保(川西)バス停で下車、徒歩20分

自動車では、国道305号線新保交差点を西へ曲がり、すぐに右折。そのまままっすぐ行き、つき当たりを左へ。まっすぐ行き、海へ突き当たった角にあります。

駐車場は、たくさんあります。

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