福井県敦賀市に伝わる人柱伝説。これはとても人道的で穏やかな優しい人柱伝説です。
そしてその人柱は現在も目にすることが出来ます。人柱を見ることが出来るのはなかなかあるものではありません。
人柱の舞台となった今橋の現在と、今に伝わる人柱を安置する真禅寺を訪問します。
人柱伝説
今橋の人柱(敦賀市相生町)
敦賀のまん中を流れる川は、木の芽川と黒河川が三島で合流して笙の川となり、海にそそいでいます。
昔、この川は大雨が降る毎に氾濫して、河口近くにある今橋を流したり、町中水つきになったりして、たいへん困っておりました。
橋が流される度に、町の人々は、水害のため亡くなった人々の亡霊が橋を渡るために、川の神様が怒って、橋を流してしまうのだと噂しておりました。
「何とか流れない今橋をかけなければならない。それには人柱を橋の下に入れて、神様をお慰めしなければ」という話が誰の口からともなく出て、とうとう皆でそう決めてしまいました。
しかし、人柱といっても、人一人を生きたまま埋めることもできず、何回も集って相談した結果、大きな石に仏さまのお姿を、深く刻み、お祈りして川底へ沈めて工事を進めることにしました。
それ以来、完成した今橋は流れ落ちることもなく、人々も安心して渡ることができたということです。
昭和に入って、今橋は新しい工法で鉄筋になりましたが、昔、人柱として沈められた石像は、真禅寺内に移され、塔として今に残っています。今敦賀では、笙の川の今橋から西を川西、今橋から小屋の川までの東を川中といっています。ともに昔は水害の甚だしかった所です。
引用:『つるがのむかしばなし』
なんとも穏やかな人柱伝説です。
人柱は伝説ではありますが、やはり人間を生埋めにするのが常です。それは現代では到底許されることではなく、もちろんその時代の人々も人柱になりたいという人などいないでしょう。伝説上では自ら手を挙げる人もいますが、それも本当かどうか。
そんな中、この敦賀の人柱は人を殺さない、生き埋めにしない人柱伝説です。こんなに穏やかな人柱伝説があったのかと感動しました。
私はこの人柱伝説をぜひ見てみたいと思いました。
今橋

今橋があるのは旧笙の川の河口付近です。
今の笙の川はもっと西にありますが、かつては洲崎の高灯籠の港が川のあった場所でした。
そうです。場所は洲崎の高灯籠と近くの橋といえばわかりやすいかもしれないですね。敦賀港大橋の一つ内側にある橋です。

奥に見えるのが敦賀港大橋です。
現在も川は流れています。

川の名残は船着き場として、その先は幅がだいぶ狭まって今でも川です。

そしてこの辺りは昔の風情がほんの少し漂っています。
敦賀の今橋は、かなり古くから存在していたようです。
『中日本建設コンサルタント株式会社 島田技術顧問のサイト F18 福井県』によると、1635年あたりから確認されているようです。この時点ではまだ土橋、次に1724年に記述、土橋。1935年にも記述このときにアーチ橋になったようです。

伝説を見るに、最初の建設当初というよりかは、そのあとに何度か流されてから人柱を立てたということのようです。
詳しい年代は不明です。
今に残る人柱


真禅寺。観光寺院ではありません。果たして今もあるのか。きっと人柱に出会えると期待を込めて訪問しました。
すると、向こうに何かが見えます。

近づくと、庭に郷土史に載っていた写真と同じ石塔がありました。「これだ」と思いましたが、まだ確信はありません。
そして、さすがに気軽に入れるようなお寺ではありません。私はインターホンを鳴らしました。
ご住職と思われる方が出てこられて、その方に「あの庭にある石塔は人柱ですか」と尋ねました。すると、そのお寺の方は「そうです。人柱です。よく知ってますね。」とおっしゃいました。
これで確定しました。
人柱を目にすることができました。
そして特別に庭に入って撮影する許可をいただきまして、近くで撮影することができました。
急にお邪魔してしまい申し訳ありませんでした。ありがとうございます。



確かに石仏が彫られています。
これが人柱。人の代わりに今橋に埋められて、ずっと支えてきた人柱です。
今はこうしてお寺に安置され、この目で見ることができるのです。
優しい人柱伝説
きっと、この時代は「人柱」なんてものは人間を生埋めにするということは、言い方はおかしいかもしれませんが「あたりまえ」だったはずです。人柱といえばそういう意味になります。
それでも敦賀の人々はそんなことは出来ないと、人柱の概念を突っぱねました。
人を殺さず、地を鎮める。「うまくいくのか」と大勢の人が思ったに違いありません。
それでもその敦賀の人々の人道的で優しい心が、石像に人柱を任せ、犠牲者を出さずに流れない今橋を完成させた。
それは後世に伝えるべき偉大な業績ではないかと思うのです。
敦賀の人々のやさしさが現れている伝説であると、そう思います。
参考文献
『つるがのむかしばなし』著者敦賀美術考古学研究会 出版1978
中日本建設コンサルタント株式会社 島田技術顧問のサイト F18 福井県
協力
真禅寺
基本情報(アクセス)
今橋
最寄り駅 | 敦賀駅から徒歩24分、又は敦賀駅からバスに乗り換えお魚通りバス停下車すぐ |
自動車 | 敦賀ICから6分 |
駐車場 | なし |
真禅寺
最寄り駅 | 敦賀駅から徒歩24分 |
自動車 | 敦賀ICから4分 |
駐車場 | なし |
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