福井県敦賀市古田刈にとある狐に化かされる言い伝えが残っています。それはその地域の火葬場付近で起こるとされ、その狐の住処は近くの岡山にある稲荷神社であるといいます。
今回はそんな稲荷神社と火葬場跡を巡り、言い伝えの聖地を訪ねます。
伝承
火葬場に現れる岡山の狐
昔或る人が、町へ建前に行っての帰り途、折詰を自転車の荷台にくくって火葬場の曲がり角まで来たら、前方でガサゴソと音がしたと思った瞬間、自転車もろとも田の中へほうり込まれた。時既に折箱は無くなっていた。知り合いの人が通りかかってやっと人心持がついたと言う。
ちなみに、「前の火がたたかれたらうしろをたたけ。狐はうしろにいる。」という。
引用:『敦賀の民話民謡』
学校行事と岡山の狐
岡山稲荷の狐は砂まき狐である。昔、小学生がいたずらをしたので狐が腹を立てて、学校に何か行事があると必ず雨を降らせたという。
引用:『敦賀の民話民謡』
地理
現在は敦賀の市街地の一部となっていますが、昔は田園の広がる郊外でした。
敦賀の町へ仕事に行った人も多かったのでしょう。
古田刈の集落は、現在ではわかりにくくなっていますが、丁度火葬場の南200mほどのところに集落があります。
なので敦賀に行く際、敦賀から帰る際はどうしてもこの火葬場を通ることになっていたのであろうことは確かです。
岡山も集落から300メートルほどなので身近な存在だったことでしょう。
聖地
古田刈火葬場

古田刈火葬場は現在の古田刈のセブンイレブンのある交差点付近にあったそうです。
セブンイレブンの角に石碑が残っています。



石碑の敷地には、由来が書かれた石板もあり、石碑の後ろには火葬場の文字もしっかりと刻まれています。
伝説ではこのあたりで狐に化かされて田んぼに落っこちたということになります。
今では火葬場や田園だった名残は一切なく、完全に市街地の一部となって、車通りの多い、にぎやかな場所となっています。
岡山の稲荷
岡山については前回岡山の伝説でも説明したことがあります。
この岡山の東端に登るところがあります。

巨木が生えている階段が目印です。

この岡山は森を形成しています。それが特に色濃いのが東側で、前回取り上げた通り、木を切ると祟りがあるとか言われています。

この階段は結構急で振り返るとこんな感じです。
転ばないように気を付けなければなりません。
そしてこの階段の先、頂上に稲荷神社跡があります。

社殿は崩壊してしまっています。結構長い間このままだったようです。


建築物の形がしっかり残っている木材もあります。ところどころ朱色も残っています。稲荷神社であることが分かります。
銅板の屋根のようなものもあります。

石が立っています。稲荷神社の何かだったのでしょう。何か書いてあったのか何も書いてなかったのか。少なくとも現在は何も読めません。
今も見られる聖地
岡山はもともと木を切ってはいけないという禁足地で自然も豊かだったことでしょう。なのでここに狐が住んでいてもおかしくありません。そしてそんな岡山に稲荷があったことにより、より一層狐の伝説が信じられてきたのでしょう。
そのいくつかが、火葬場での狐のばかしだったり、学校へ雨を降らせる報復だったりするのです。
そんな伝説の聖地が今もこうして、完全な形とは言えませんが、火葬場も稲荷神社もここにあったということは残っているというのは、とても価値があり、昔の伝承伝説に思いを馳せることのできる素晴らしい土地なのです。
参考文献
『敦賀の民話民謡』
基本情報(アクセス)
古田刈火葬場跡
最寄り駅 | 敦賀駅から古田刈中バス停で下車徒歩5分 |
自動車 | 敦賀ICから6分 |
駐車場 | 無し |
岡山稲荷跡
最寄り駅 | 敦賀駅から卸売市場前バス停で下車徒歩2分 |
自動車 | 敦賀ICから5分 |
駐車場 | 無し |
コメント