福井県小浜市中名田地区の一番奥に亀が淵という名所がある。中々山奥にあるが、福井の一度は見ておきたい滝だろう。
由来とされる奇岩が散乱し、山奥の谷から流れ出る自然の風景。伝説では龍王の聖地ともいわれる。
どこにあるのか、道中を行く
国道162号線。中名田地区に入ったところの交差点に亀が淵の看板があります。ここにも説明が書いてありますね。
といっても↑写真は2019年のものです。つまり3年間心に引っかかっていた場所についに今回訪問することができたのです。当時は登山並みのものと思っていたので装備がない状態で来ており諦めました。実際は登山じゃないです。
その道中を今から見ていきます。
交差点から中名田地区の中に入ります。道中にも亀が淵の看板がいくつかあります。それに沿って進みます。
かなり山奥の小屋集落まで来ました。そして集落の一番端に、亀が淵3.0kmの表記があります。
村の端を護っているかのようなお堂があります。
この先は俗世から離れるという雰囲気を放ちます。
しばらく林道を進みます。
高い杉林。ここまではまだまだ余裕です。
道路も舗装されています。
間もなく舗装がなくなります。そして道幅が狭くなります。大型の乗用車では難しいと思います。
谷川沿いを進みます。
橋渡ります。その後急カーブです。ここで大型の乗用車は進行不能になると思います。
片面は壁、片面は川。慎重に行かねばなりません。覚悟を決めて。
その状態の道が川沿いにずっと続きます。
そのうち小屋が見えてきます。集落名ではなく本当の小屋です。その小屋の辺りまでで道は終わり。そこが駐車スペースです。
車から降りて歩いて進みます。
奥に何か見えますが、亀が淵はすぐそこです。
亀が淵
さて到着です。しっかり説明板も設置されています。
写真が下手なのはごめんなさい。あくまで伝説目的ですので…。
と言いつつ、おそらく下手な写真でもわかるくらいの自然の雄大さだと思います。
滝の下には巨岩巨石が堂々と居座っています。
人間一人がこの自然の中にぽつんといると取り込まれそうになります。なるようにしかならない。自然の仰せのままに。
名前の由来と言い伝え
では、本題と行きます。
「亀が淵」という名前。「ぜったいに亀が居た淵だろう」と思っていたのですが違うみたいですね。
『中名田村誌』原文載せます。
田村川の水流を遡ること二里余にして此処に有名なる深淵あり。怪巌奇石亀の形を成す故に之を亀か淵と名く。古来曽てこの深さを知る者無く里人龍王の聖地と称へ大に畏敬せり。伝へ聞く、此淵に石礫及汚物を投ずれば忽ち驟雨を起こし洪水を漲らすと。此他銚子淵、鍋淵あり銚子淵は銚子の形をなし鍋淵は鍋の形状を成す、何れも天然の巧妙に驚かざると得ず。
引用:『中名田村誌』
ちなみに『越前若狭の伝説』や『小浜市中名田郷土誌』はこの『中名田村誌』をそのまま又は抜粋して載せていましたので省かせていただきます。
ということで亀のいる淵ではなく、亀の形をした石があるから亀が淵という名前になったという話でした。
おそらく大昔とはまた形状は変わっているかと思います。洪水や土砂崩れもあったでしょう。
それに、今のように言い伝えにあるような「怪巌奇石」と「滝」を一緒に見られるのは、この地区の整備があったおかげですから…。
【参考】:中名田ブログ係 その現場名は”亀が淵”(中名田ボランティア部隊)
それで整備されたためか、滝へ接近できるルートが作られていました。説明板のある岸ではなく、その橋を渡る前に左に道があります。
「淵」ではないですが、「滝壺」を龍王のいる場所だと妄想しながら覗いてみます。
滝の一枚岩。滝壺はそんなに深くないにしても、他の石に囲まれて「壺」というかんじです。
いるのでしょうか。龍王さんは。
畏敬の念で、私はこれ以上下手に近づかないでおきます。事故ったら迷惑かけますし。
ちなみにこの田村川の上流水は酒の水としても使われてるようです。龍王の住まう水の酒って、神聖ですね。
それはそうと水流の写真が絶望的に下手。
亀が淵の謎
さて、少し気になっている方もいるかもしれませんが、名前は「淵」なのにここは「滝」が見所なのです。
淵といえば「川に出来る深い場所」です。よく蛇行した川や岩盤を流れる川などに一部深くなった場所があるかと思いますが、あれが「淵」です。なので、先ほども言いましたが、淵とは「滝」でもないし「滝壺」の意味でもないわけですね。なぜ「亀が淵」なのに「滝」なのでしょうか。
実際はこの滝は「亀が淵の滝」と言われているようです。なのでこの滝や滝壺が「亀が淵」というわけではないのです。この滝の近く、又は上?にその淵があるのでしょうか。それとも地名として残っているという感じでしょうか。
『中名田村誌』では、いまの「亀が淵の滝」については、私の見る限りでは一切書かれておらず。これだけ素晴らしい滝ならば亀が淵と共に載っていてもいいはずなのに「滝」については何も書かれていないのです。見谷(今の上田の中)にある滝については「三瀑布」として書かれていますが。
この『中名田村誌』は、大正4年の『中名田村役場刊』の内容を郷土誌として復刻した資料だと言います。つまり大正4年の時点では、「滝」ではなく「淵」がメインの場所だったということなのでしょうか。
滝の周りの川も岩石の間を水が流れて、いかにも「淵」と呼ばれそうな場所があると想像できます。
なににせよ、この雄大な「自然」を「神」として崇め、「龍」を連想するのは、何とも日本的で素晴らしいのだと思うのでした。
整備されたおかげで、外部の人でもその自然を堪能することができるのです。
----
※追記
SNSにて中名田の地元の協議会の方から、この[亀が淵の謎]についてご教示いただけました。ほんとうにありがとうございます。
これについてはおそらく口伝により伝わっているものとされているようで、
「淵は滝の上流部にありましたが、土砂などにより変化してしまいました」
とのことでした。やはり、滝と淵の場所は別物だったようです。しかし、今の滝を直接見ればわかりますが、あの岩々をみると、どれほど大きな山崩れがあったのかがうかがえます。それでもなお「亀が淵」という地名を現地にて残してくださり、「滝」という新たな名所を生み出してくださったということは、やはりそれほど地元の方にとっても大切に伝えられ、それが故に今があるのだろうなと思いました。
滝は見ごたえあり、亀が淵という場所に龍王の聖地があったことには変わらず。
滝を望むと、ほら。
滝の向こうに龍王の気配がしませんか?
----
参考文献
『中名田村誌』
『越前若狭の伝説』
基本情報
自動車 | 小浜ICから29分。大飯高浜ICから34分。 |
駐車場 | 停められるスペースはあります。 |
コメント