福井県大野市阪谷地区南六呂師には巨石がたくさんあります。経ヶ岳の山体崩壊で流れて来たといわれています。
そんな南六呂師には巨石にまつわる、ある伝説があるのです。
今回は、そんな巨石の伝説を見て行きたいと思います。
「女郎岩」の伝説
女郎岩という大岩があり、この地の小字の地名にもなっています。周囲四十二メートル、高さ十一メートル、頂上の平らな所は三十平方メートルあります。むかしこの岩の中に女神がおり、機を織っていて、そのおさの音が聞こえていたといいます。今は松村利一氏の庭園の一部になっています。 参考:『越前若狭の伝説』『福井県大野郡阪谷五箇村誌』 |
そう、今回訪れる巨石には女神様がいたとされる神聖な岩なのです。
機織りの岩の伝説は、越前町の江波にも「機織り岩」という岩があります。
江波の伝説は、神に捧げるために人間の女性が機を織って、神の怒りを鎮めたという伝説ですが、この大野六呂師の女郎岩は、女神様が直々に機を織っていらっしゃるのですね。
しかも岩の中にいらっしゃると。
凄く見てみたいと思います。そんなわけで南六呂師の某所に向かいます。
女郎岩という小字について
正直、明確な場所がわかりません。
伝説には「女郎岩という地籍に同名の大岩がある。」とあります。つまりは、「女郎岩」という小字を探せばなんとかなるはずです。
『福井県大野郡阪谷五箇村誌』に女郎岩のことが載っています。
しかし、小字といっても、福井県はすでに「番地」表記になっており、小字がどこにあったかは明確にはわからなくなってしまっているからです。
(実は、小字には番号が降られていて、その降られている番号と現在の番地を合わせることで、場所を洗い出せたりするのですが、確実な場所まではわかりません)
女郎岩はどこにある
結局、はっきりとわからず現地へ来てしまいました。
もうこうなったら、女郎岩地籍周辺の外にいる方に話を聞くしかありません。
外で作業してらしたので、尋ねてみることにしました。
まさかのその人の家でした。
案内してくださりました。
しかも、この岩についてのお話も聞かせていただくことができました。
ありがとうございます。
所有者のお話と女郎岩の現在
人家の私有地です。許可なく立入はしてはいけません。許可なく写真を撮ってはいけません。
こちらが女郎岩です。
でかい・・・。想像以上にでかい。よくみると階段があります。この上に登っていけるんでしょうか。ただ今は全く使われていないような感じです。
岩には、立派な木が生え、苔むしていて、多くの植物が生息していました。まさに歴史も感じ神秘さも感じ、伝説が出来上がるのもうなずける巨石です。
その方の話によると、
「昔は、岩の階段も草を刈って整備してあって、岩の上へ登って遊んでいました。」
といいます。やはり、昔はこの岩の上に登れたんですね。
他にも私のように、この女郎岩の事を聞きつけてやってくる人がたまにいるらしく、岩の上へ駆け上っていくらしいです。しかし、家の方によると、
「万が一のことがあったらいけないから、あまりおすすめはしません。」
とのことです。
この家の方にも迷惑が掛かってしまうでしょうし、私は忠告に従って上りませんでした。
あとから、この家のお母さまがでてきて、その方にも外の方へ案内していただきました。
親切・・・。世知辛い世の中で、この親切さは胸が熱くなってしまいました・・・。
家の土台の壁面から顔を出しています。
でかい・・・。外から見ると余計大きいです。
「木で見えないけど、ずっと向こうまであるんです。」
とおっしゃっていました。
でかすぎて、入らんのです。
お母さまのお話によると、
「昔は岩に耳を当てて澄ますと、機を織る音が聞こえたといいましたけど。」
とおっしゃっていました。
その土地の方からその確信的な言葉を聞くということは、地域の伝説を探求する者にとってはとても有意義な事です。こういった話を聞かせていただけるということにも感謝です。
伝説を追い求めて、それが間近にあり、耳を当てて機の音が聞こえるという話で、伝説もこの身で体感できました。
本当に親切にしてくださってありがたい限りでした。
素晴らしい伝説を伝える素晴らしい方たち
今回こんなにも素晴らしい伝説と人に巡り合うことができました。だからこそ地域の伝説の探求はやめられないのです。
今回の調査では、個人宅ということもあって公には場所や詳細などは記載できませんが、この伝説や伝承の重要性、魅力などが伝わればうれしいと思います。
人の家を載せるのもあれなので、六呂師集落センターの付近とだけ。
参考文献:『越前若狭の伝説』『福井県大野郡阪谷五箇村誌』
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