大本の守り神「大石な様」伝説と最後の訪問【池田町】

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福井県池田町下池田村の足羽川ダム建設予定地にあった集落の痕跡を求めて、訪問しました。

 ↑前回、大本集落の村の歴史を探しました。

今回は、下池田村訪問の一番の目的地「大石な様」の伝説と訪問レポートを書いていきたいと思います。

この大石な様も足羽川ダムができた後は来ることができなくなる可能性がありますから、ここに詳細を記していきたいです。

大本の大石な様の伝承

まずこの大石な様がどういった存在なのか、郷土資料の『会報集録郷土史探求 池田歴史の会』をもとに、見て行きたいと思います。

 大本集落の中程に大口谷という谷川があり、部子川にそそいでいますが、この谷の集落より百五十メートル程入ったところに、大石が谷を背に立ちはだかっています。この石を「大石な様」と呼び、昔はこの谷の奥の「モノケ洞」に夫婦岩と呼ばれる二つの大岩の一つがまくれ落ちて、ここで止まったと伝わっています。
 大石な様は、高さも横幅も六メートル以上あり、どちらから見てもかっこの良い大岩で、その上には欅の大木が四本と樫の木一本が生い茂り、根が岩を伝って大地に入っているので、台風にもビクともせず、雄大で神々しく美しい自然の生気に満ちた風景をみせています。昔は「オヒナさん」と呼び親しんでいました。これは夫婦岩の女の神様の岩がまくれてきたのでこう呼んだと思います。
 男神さんの大岩はまだ山の上にあります。
 昭和三十六年の未會有の風水害でも、県道は流れ、部子川も荒れ人家に被害が出ましたが、ここでは人家に大災はなく、今年の集中豪雨でも被害が少なく、この大口谷の守り神として地元から崇拝されていたそうです。

参考:『会報集録郷土史探求 池田歴史の会』

まさに村の守り神として、信仰され慕われてきたのでしょう。何とも数奇な運命の女神さんです。

この言い伝えを聞くとすごく会いに行きたくなるのです。

というわけで最後になるかもしれませんが、実際に会いに行きます。

大石な様に会いに行く

大石な様への入口

大石な様1

大口谷橋があります。

伝説の「大口谷」というのはここのことでしょう。

この橋のそのわきに入れます。

大石な様正面

ここの道をほんの少し、本当に百数メートルくらい行くと、

大石な様2

大岩が見えてきます。

こちらが「大石な様」です。

ほんとにあります。こうやって伝承の地が実際にあると、興奮します。

虫にはご注意を

しかし、突如攻撃をうけます。

このアブが、集団で襲ってきているのです・・・。

もう出れないので、車から撮っています。

ここは、アブの住家でしょうか・・・。行く際は虫よけの対策が必要ですね。

砂防ダム

登ってからしばらくUターンできないので、ターンできるところまで登るしかない・・・。

アブと一緒に登ります。

大石な様3

途中砂防ダムがあります。

深い森の新緑の中に現れる砂防の壁は、何とも言えぬ威圧感があります。

砂防好きもいいかも・・・。

大石な様をじっくり見る

大石な様まで戻ってきまして、後ろから見ます。

大石な様4

存在感が凄いです。

岩から生えている大木も相まって、神聖な雰囲気をかもし出しています。

大石な様5

女神様、村の守り神。

そんな大石な様があるのは、現在の県道から百メートル程度の場所。

つまり、ダムに沈むのでしょう。

足羽川ダムは治水ダムではあり、普段は水を溜めないらしいのですが、この大石な様に会いに来ることはできなくなるのかもしれません。

大石な様6

林道沿いにある「大石な様」。その光景はとても神聖な雰囲気で、まさに「神様」という感じ。

自然崇拝や磐座というものが実感できます。

しかし、村はすでに人家はありません。

もちろん大石な様のあるこの大本集落もダムに沈みます。

足羽川ダムは福井豪雨の被害を機に、「治水ダム」として事業が発足したものですが、その福井豪雨から村を護ったとされる「大石な様」と護られた集落がこのダムに沈むというのは、なんとも皮肉なものです。

村が消えても残り続ける言い伝え

足羽川ダム建設でいくつもの集落が無くなってしまいます。神社もなくなり、伝承の地も訪れることが出来なくなるでしょう。

大石な様も、今後見ることが出来るかわかりません。

しかしながら、言葉や文字、絵で語ることのできる村の伝説伝承は、今後もこの集落たちを語り継ぎ、集落を偲ぶ手段となり、いつまでも記憶に残り続けることでしょう。

参考文献:『会報集録郷土史探求 池田歴史の会』

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